令和4年の告示改定により、条件付きであと施工アンカーは新築で使用可能になりました。
法的に使用は可能になりましたが、どんなところにでも、どんなあと施工アンカーを使用してよいわけではありません。
時事ネタも踏まえてあと施工アンカーの使用上の留意点について書いていきます。
①具体的な告示の改定内容
国土交通省のHPに公表されている内容に補足する形で解説していきます。
引用元は『こちら』になります。図版もありわかりやすいと思います。
具体的に改定されたのは『平成13年国土交通省告示第1024号』になります。
これまではあくまでも既存のRC造の部材とそれを補強するための部材との接合に用いるものに限定されていました。主に耐震補強時のRC増設壁や枠付きの鉄骨ブレースを設置する場合を想定したものでした。
既存建物かつ地震力(短期荷重)を負担する部材に対して使用していました。
今回の告示の改定で、既存建物に対する増改築に限らず新設にも使用できるようになりました。
使用を想定している事例としては、新築の施工精度を要する箇所や増改築での床スラブ増設に伴なう定着筋への適用があがっています。
改定された文章の一部を以下に抜粋しておきます。既存、補強するための部材といった表現がなくなっています。
変更前
十四 あと施工アンカー(既存の鉄筋コンクリート造等の部材とこれを補強するための部材との接合に用いるものをいう。第二第十三号において同じ。)の接合部の引張り及びせん断の許容応力度は、その品質に応じてそれぞれ国土交通大臣が指定した数値とする。
変更後
十四 鉄筋コンクリート造等の部材と構造耐力上主要な部分である部材との接合に用いるあと施工アンカーの接合部の引張り及びせん断の許容応力度は、その品質に応じてそれぞれ国土交通大臣が指定した数値とする。
②使用する上での法的な留意点
新告示が施行されたからと言ってどのようなあと施工アンカーでも自由に使えるというわけではありません。きちんと国土交通大臣が許容応力度及び材料強度を指定したあと施工アンカーを使う必要があります。
「強度指定を受けたあと施工アンカーの一覧」として国土交通省のHPからは一般社団法人 建築性能基準推進協会のHPに飛ぶようになっています。
しかし、現状ではリストにのっているのは清水建設の『鉄骨小梁の接続に用いる接着系あと施工アンカー』のみになります。
この工法についての詳細が紹介されているページがあったので紹介しておきます。
あと施工アンカーの設計・施工法に初の強度指定
個人的にはもう少し普及するのかと思っていましたが、一般的に使用できるようになるのはもう少し先になりそうです。
③使用する上での技術的な留意点
もともとあと施工アンカーが法的に使用できるようになったきっかけは、2005年の耐震偽装事件に対する、違反建物を耐震補強することです。この時点では法的な枠組みの中にあと施工アンカーがなかったことから、『平成13年国土交通省告示第1024号』を平成18年に改定することで告示に組み込まれました。
従来は設備機器の固定のような主要構造部とは別の部分で使われていましたが、それ以外の使用範囲が拡大したことで技術的水準が向上したという背景があります。
長期許容応力度に対しては、長期のクリープや耐火・耐熱性、へりあきの影響、ひび割れ、樹脂の違いによる付着特性などの技術的な知見の不足が課題としてあがっていました。
平成の20~22年度の建築基準整備促進事業でも技術的な知見が取集されてことにもなっていますが、今後使用していくあと施工アンカーにおいては長期荷重を負担するような箇所に使う場合でも前述のような課題に対してのどのように解決が図られているのかは確認することは重要なことになると思います。
指定を受けている材料だからとメーカーや施工者に丸投げするのではなく中身を把握すること(特に使用可能範囲や条件)は忘れないようにしましょう。
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