杭を設計する際にほぼ不可欠なのが杭頭補強筋です。杭からの応力を基礎梁に伝達し、地震時の水平力や付加軸力による引抜力に抵抗する重要な役割を果たします。
その役割を担っているのがフーチングや杭頭補強筋です。
建築としては目立たない部分ではありますが、杭の設計方針を決める上でも重要な部分になります。今回の記事では既製杭の杭頭部分の設計の留意点について解説していきます。
既製杭前提の解説にしていますが、大きな考え方については鋼管杭や場所打ち杭についても共通する内容は多いので参考になると思います。
①杭頭部の境界条件
まず杭頭部の境界条件をどのように考えるかによって上部躯体及び杭の設計が変わってきます。
杭頭を固定条件にするか、半固定条件にするかの選択肢があります。
一般的には杭頭の境界条件は固定として考えることが多いと思います。杭頭を固定にする際には杭頭補強筋を設けてフーチングと一体化をはかるか、フーチングに杭径分埋め込むといった方法があります。主流は杭頭補強筋を設ける方法です。フーチングに深く埋め込む方法を採用するとフーチングの下端のレベルを非常に深くする必要があり、フーチングの補強筋も多くなり、施工手間が非常に多くなります。
半固定にする場合には認定工法を使用する必要があります。主流の工法はFTパイル工法になると思います。杭頭補強筋を設けるのではなく、杭頭部にフーチングを載せるような形状にすることで杭頭部の回転を拘束しないようになっています。
②杭頭境界条件の使い分け方
次に固定条件と半固定条件の使い分けはどのように考えるのかを見ていきます。
固定条件の場合には杭の応力は杭頭部が最大の応力になります。それが設計全体を見たときにどのような影響があるのかを解説します。
境界条件での応力が杭からの曲げ戻し応力として基礎梁が負担する曲げ応力となります。そのため杭頭を固定条件としていると基礎梁の負担する応力が大きくなります。
杭自身においては曲げモーメントが杭頭部で最大となるため、下杭に発生する応力は小さくなります。そのため耐力の大きい上杭の長さを短くできますが、その代わりに最大値が大きくなるため、上杭の耐力を高くする必要があります。
杭頭のモーメントが大きくなるということは杭と基礎梁間で伝達する応力値が大きくなるということを意味します。それは応力を伝達するための杭頭補強筋やフーチングもその分耐力が必要になるということです。
既製杭は工法の改良により高支持力化が進んでいます。そのため長期支持力に対しては小径かつ少ない杭本数で負担できるようになっています。それは水平力を負担する杭も小径かつ少ない杭本数で負担することに繋がります。それに伴って特に上杭の高耐力化、杭頭補強筋の高強度化と密集化が起こっています。
杭頭補強筋の現実的な納まりを考えて杭径が決まってくるということもあります。
こういったことを解決するための方法としては大きく二つあります。
フーチングの飲み込み部での力の伝達
杭頭補強筋だけでなくフーチングに飲込ませている部分でRCに力を伝達することと兼用することで杭頭補強筋での負担応力を軽減することができます。その場合にはフーチングへの飲込み部分に補強筋を設けたり、埋込部分に対しては躯体内にもフーチングと同等のFcを持ったコンクリートを中詰めコンとして打設することが推奨されたりします。
杭頭半固定工法とする
言葉の通り杭頭の境界条件を固定ではなく半剛接にすることで、杭頭部の回転剛性を落とすことで杭頭部の曲げモーメントを小さくすることができます。それにより、杭頭補強筋を減らしたり、なくしたりすることが可能になります。
杭頭の曲げモーメントを小さくできる代わりに杭頭の変形が大きくなったり、曲げモーメントの最大値の位置が杭頭から下に下がっていくので耐力の高い上杭が長くなる場合もあります。
地盤の状況や杭全体の長さによっては特段メリットが出ない場合もあるため、必ずしも杭頭を半固定にすれば狙ったようなメリットが出ない可能性もあります。
したがって、杭単体でのコストメリットに限らず、杭頭部の仕様と基礎梁の配筋量といった総合的なコストメリットや施工性を踏まえて適切な工法を採用しましょう。
③杭頭部で使用する工法
最後に実際に杭頭部でよく使用する工法について、実務で使用する際の着目点と留意点について解説していきます。
杭頭固定の工法
J-bar
杭頭部がSC杭のような鋼管を外側に巻いている場合に主に使用する工法です。溶接用に開先が設けられている鉄筋を杭頭部の鋼管に溶接して取り付けます。材料強度と鉄筋径にも種類があるので、応力に応じて使い分けやすくなっています。材料強度は390と490で鉄筋径も32,35,38,41と太径のものになります。
現場溶接で取り付けるため、事前に杭に取り付けるための加工をしておく必要がなく、現場の状況に応じて取り付け位置を決めることができます。
当然計算上では均等に割り付けることを前提としているため基礎梁や柱の鉄筋との関係でおさまらずある程度偏った配置にせざるを得ないこともありますが、その場合にでもどこまで許容できるのかの規定もメーカーで設定しているのでその規定を満足するように検討が必要です。
また1本杭の場合にはフーチングのせいがJ-barの定着長で決まってくることが多いので、負担応力が小さいからとサイズを絞り過ぎないように注意しましょう。
パイルスタッド
杭頭部でSC杭程の耐力を必要としてない場合にはコストを下げるためにRC系の杭を使用します。その場合には鉄筋を外周部に溶接することができないため、杭頂部の鉄板にスタッド溶接で専用の異形棒鋼を取り付けます。
こちらで使用する材料強度や使用できる径は一般的な異形鉄筋を考えてもらえればよいです。そもそもの杭頭部の耐力が低いのでJ-barで使用するような高強度材や太径の鉄筋はありません。材料強度はSD345、鉄筋径もD25までになります。
杭頭半固定の工法
FTパイル
杭頭の杭種によらずに使用することができます。杭頭補強筋を設けないことと杭頭部での回転を拘束しないように鉄板でのカバーを設けることで回転剛性を低下させます。実際には軸力に応じて摩擦力が生じるためそれによる回転剛性を持つので軸力によって固定度が変わってきます。固定に対して0.6~0.8程度になるオーダーです。
ただし、地震時に浮き上がりが生じる箇所については引き抜き抵抗用の高強度の鋼棒を設けます。高強度で小径の鋼棒とすることで耐力は確保しつつ、剛性は落とした材料を使用することで、回転剛性が部分的に高まることがないようになっています。
鋼棒と杭の取り合いはパイルスタッドと同様で杭にはあらかじめネジを設けておくことになるため現場での位置調整はできません。
ジョイントカプラ工法
J-barと同様でSC杭に対して使用する工法です。杭頭補強筋を取り付けるジョイントカプラを杭頭に溶接します。そのジョイントカプラに鉄筋を螺合することで固定します。
FTパイルのように積極的に回転剛性を下げるようなことはしていませんが、実際には完全に剛接合になっていないことを詳細に評価することで杭頭の曲げモーメントを小さくすることができます。
J-barのように条件内で配置も現場で調整できます。
また鉄筋の頂部に定着帯を設けることで鉄筋の定着長を短くできることも特徴です。材料の種類はSD490で鉄筋径はD41に限られます。また、使用できる杭メーカーも限られます。
まとめ:杭頭設計は「力の伝達」と「現場の納まり」の最適解を探す
今回の記事では、既製杭の杭頭境界条件(固定・半固定)の違いと、代表的な4つの接合工法について解説しました。 設計において、以下の3つの視点を持つことが重要です。
- 境界条件: 杭頭を「固定」にすると杭頭部のモーメントが最大となり、基礎梁への曲げ戻し応力も大きくなります。一方、「半固定(曲げ低減)」にすると杭頭のモーメントは減りますが、杭の変形が大きくなり、最大モーメント位置が深くなるため上杭を長くする必要があります。全体コストと施工性で判断します。
- 高支持力化が生む「過密」問題: 近年の既製杭は高支持力化により少ない本数で大きな力を受けるため、杭頭補強筋が太径・過密化しやすい傾向にあります。これを回避するために、フーチングの飲み込み部での応力伝達を見込んだり、半固定工法を採用したりする検討が不可欠です。
- 工法の適材適所と現場調整:
- SC杭用: 現場溶接で配置調整が可能な「J-bar工法」や、完全剛接合ではないことを評価して曲げを低減しつつ定着長も短くできる「ジョイントカプラ工法」。
- RC系杭用: 耐力が低めの杭頂部にスタッド溶接する「パイルスタッド工法」。
- 杭種不問: 回転剛性を積極的に落とし、引抜に対しては高強度・小径鋼棒で抵抗する「FTパイル工法」(現場での位置調整は不可)。
これら杭種・要求耐力・施工性を理解して使い分けることが設計者の役割になります。
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問題1 杭頭の境界条件を「固定」として設計した場合、杭頭部での曲げモーメントが最大となるため杭自体の負担は大きくなるが、その分、上部構造(基礎梁)へ伝達される曲げ戻し応力は小さくなるため、基礎梁の断面や配筋を経済的に設計することができる。
問題1 :× 解説: 杭頭を「固定」にするということは、杭と基礎梁をがっちり固めるということです。杭頭に生じた大きな曲げモーメントは、そのまま「曲げ戻し」として基礎梁に伝達されるため、基礎梁の負担応力は大きくなり、配筋量が増加します。
問題2 「FTパイル工法」は杭頭部の回転剛性を低下させる半固定工法であるが、地震時に引抜力が生じる箇所には、回転のしやすさ(半剛接状態)を阻害しないよう、太径の鉄筋ではなく「高強度で小径」の鋼棒を設けて耐力を確保している。
問題2 :〇 解説: 半固定工法は「回転は許容するが、引抜きには抵抗させたい」という相反する要求を満たす必要があります。そのため、太い鉄筋を入れると剛性が上がって固定に近づいてしまうため、あえて「細くて強い(高強度・小径)」鋼棒を使用することで、部分的に剛性が高まるのを防ぎつつ引抜き耐力を確保しています。
問題3 SC杭に用いられる「ジョイントカプラ工法」は、杭頭補強筋を取り付けるカプラを杭頭に溶接し、そこに鉄筋を螺合(ねじ込み)して固定する工法である。あらかじめ杭にネジ穴が設けられているFTパイルの鋼棒等とは異なり、ジョイントカプラ工法は現場での鉄筋配置の微調整は一切できないという特徴がある。
問題3 :× 解説: ジョイントカプラ工法はカプラ自体を杭頭(鋼管部)に現場溶接するため、J-bar工法と同様に条件内であれば現場での配置調整が可能です。パイルスタッド工法(スタッド溶接)なども含め、現場で溶接を行う工法は基礎梁の主筋や柱筋との干渉を避けやすいという施工上のメリットがあります。
