【わかりやすい構造設計】理解度チェック問題まとめ~力の流れ編(随時更新)

  • URLをコピーしました!

力の流れに関する記事での確認問題のまとめになります。問題のレベルとしては一級建築士と構造一級建築士の間くらいだと思いますが、実務の判断をベースに本質的な部分を深められるようにしています。
解答できなかった部分を改めて記事に目を通してみてください。

目次

①応力図

応力図の正しい読み方と3つのチェックポイント

問題1 構造設計において、曲げモーメント図は部材が変形した際の「圧縮側」に描くことが一般的であり、これにより鉄筋コンクリート造であればコンクリートが圧縮を負担する位置、鉄骨造であれば横座屈の補強が必要な位置を直感的に把握することができる。

解答1 :× 解説: 曲げモーメント図は「引張側」に描くのが絶対的なルールです。 RC造では引張側に鉄筋が必要ですし、鉄骨造では圧縮側に座屈補剛が必要になります。「図がある側=引張側(鉄筋を入れる側)」と覚えることで、直感的に正しい配筋位置や補強位置を判断できるようになります。

問題2 一貫計算ソフトから出力された応力解析結果を確認する際、最初に行うべき効率的な手順は、個々の部材の数値(軸力やモーメントの値)が正しいかを細かく電卓で検算することであり、全体の変形図や反力の釣り合いといった大枠の確認は、数値が合わなかった場合にのみ行えばよい。

解答2 :× 解説: 効率的なチェック手順は「全体像(変形・反力)→ 形状(モーメント図)→ 数値(軸力・せん断)」の順です。 まず変形図や反力の釣り合いで大枠の入力ミスがないかを確認し、その後に詳細な数値のオーダーを確認する方が、致命的なミスを早期に発見できます。最初から細部にこだわりすぎると、全体的な入力間違い(荷重の方向や支点条件など)を見落とす恐れがあります。

問題3 応力図において、柱の中間など、外力や部材の取り合いがない場所で曲げモーメント図が急激に変化したり、不自然に折れ曲がったりしている場合、それは「剛床仮定」などのモデル化の前提条件が実際の架構と合っていないことや、入力ミスを示唆している可能性がある。

解答3 :〇 解説: 外力や支点がない場所で、モーメント図がカクンと折れ曲がることは力学的にあり得ません。そのような現象が見られる場合、例えば剛床仮定によって柱の中間節点が無理やり拘束されているなど、モデル化の設定に無理がある可能性が高いため、入力条件を見直す必要があります。

応力の重ね合わせとは?基本原理から詳細図への応用まで

問題1 構造設計における「応力の重ね合わせ」の原理とは、部材が弾性範囲内にある場合において、複数の荷重が同時に作用した時の応力状態は、それぞれの荷重が単独で作用した場合の応力を個別に計算し、それらを単純に足し合わせることで求めることができるという考え方である。

解答1:〇 解説: フックの法則が成り立つ「弾性範囲」であれば、現象を個別に分解して計算し、最後に足し合わせる(重ね合わせる)ことが可能です。これが構造計算(特に一次設計)の基本原理であり、複雑な応力状態をシンプルに解くための鍵となります。

問題2 大梁の長期荷重(鉛直荷重)と地震時荷重(水平荷重)を重ね合わせて検討する場合、地震力によって梁端部に生じる曲げモーメントは正負(上引張り・下引張り)が逆転することもあるため、長期荷重による曲げモーメントと足し合わされた結果、長期単独時よりも応力が小さくなる(打ち消し合う)ケースも考慮し、最も厳しい側の応力のみを検討すればよい。

解答2:× 解説: 確かに一方は打ち消し合って応力が小さくなりますが、もう一方(逆サイドの揺れ)では応力が加算されて非常に大きくなります。 また、打ち消し合った結果、応力の向きが逆転(例:長期の上引張りが地震で下引張りになる)することもあります。RC造では引張側に鉄筋が必要なため、この「逆転」を見落とすと、本来必要な場所に鉄筋が入らない危険な設計になってしまいます。両方のケースを確認する必要があります。

問題3 建物の隅柱(すみばしら)においては、直交する2方向(X方向とY方向)の大梁からそれぞれ長期荷重による曲げモーメントが伝達されるため、地震時だけでなく常時においても「二軸曲げ」の状態となることが一般的であり、この場合は長期許容応力度(短期のような割増なし)を用いて厳しく検討する必要がある。

解答3:〇 解説: 隅柱は常に2方向から曲げられています。地震や風のような「短期荷重(許容応力度が1.5倍)」との組み合わせではなく、常に作用している「長期荷重(許容応力度が1.0倍)」での二軸曲げ検討となるため、部材断面を決める上で非常に厳しい(支配的な)条件となることが多いです。ここを見落とすと断面不足になるリスクがあります。

見落としがちな「ねじれ応力」とは?発生事例

問題1 RC造の梁がねじりモーメントを受けると、内部にはコンクリート・あばら筋・主筋による「立体的なトラス機構」が形成されて抵抗する。そのため、ねじれに対しては「あばら筋(せん断補強筋)」だけでなく、トラスの引張材となる「主筋(軸方向の鉄筋)」にも引張力が作用するため、両方の鉄筋量を検討する必要がある。

解答1 :〇 解説: ねじれモーメントが作用すると、梁は雑巾を絞ったように変形し、斜めひび割れが生じます。このとき、内部では「あばら筋」が斜め引張力に抵抗するだけでなく、それに伴って発生する軸方向の引張力に対して「主筋」も抵抗する必要があります。したがって、せん断補強筋だけでなく、主筋の断面積もねじれ用に確保する必要があります。

問題2 鉄骨造で多用されるH形鋼は、曲げモーメントに対しては強い抵抗力を持つ断面形状であるが、「ねじり」に対しては開断面であるため剛性が極端に低く、わずかなねじりモーメントでも大きく変形してしまう特性がある。

解答2 :〇 解説: H形鋼のような「開断面」は、鋼管やボックス柱のような「閉断面」に比べて、ねじり剛性(サンブナンのねじり定数)が極めて小さいです。そのため、外壁の持ち出しなどでねじれが生じる場合は、スラブで拘束するか、スチフナやプレートでボックス化するなどの対策が不可欠です。

問題3 梁にねじりモーメントが作用する場合、それによって生じるせん断応力は、通常の鉛直荷重(長期荷重)によって生じるせん断力とは力のメカニズムが異なるため、断面算定においては両者を足し合わせる必要はなく、それぞれの応力に対して個別に安全性を確認すればよい。

解答3 :× 解説: ねじれによって部材内部に生じる応力の実態は「せん断応力」です。これは、鉛直荷重や地震力によって生じる通常のせん断応力と同じ種類の力であるため、設計時にはこれらの応力を「足し合わせて(重ね合わせて)」、その合計が許容応力度を超えないかを確認する必要があります。

二次部材設計の留意点~計算仮定とディテールの整合性

問題1 スラブや小梁といった二次部材は、不静定次数が低く(単純梁に近いなど)、力の流れが明確で計算方法も単純であるため、ラーメン架構などの主要構造部に比べて力の逃げ場が多く、設計上の想定外の力が加わっても壊れにくい(安全率が高い)部材と言える。

解答1 :× 解説: 二次部材は計算が単純ですが、それは裏を返せば「不静定次数が低い(リダンダンシーが低い)」ことを意味します。力が一点に集中しやすく、想定外の荷重に対して力の逃げ場がないため、主要構造部よりもむしろ壊れやすい(安全率の余裕が少ない)部材と言えます。そのため、荷重設定や境界条件の検討は慎重に行う必要があります。

問題2 二次部材の設計において、部材断面を小さく経済的にするために端部の境界条件を「固定(固定端)」として設計する場合、その反力として生じる曲げモーメントは、支持する側の大梁にとっては「ねじりモーメント」として作用するため、特にH形鋼のような開断面の梁に支持させる場合は注意が必要である。

解答2 :〇 解説: 二次部材の端部を固定にすると、二次部材自体の設計は楽になりますが、その固定モーメントはすべて支持部材(大梁など)に伝達されます。支持部材が直交している場合、それは「ねじれ」として作用します。H形鋼はねじれに極端に弱いため、安易な固定端の設定は支持側のトラブル(変形・破壊)を招きます。

問題3 構造計算において、小梁の端部を「ピン(回転自由)」としてモデル化して断面算定を行い、実際の現場ではボルト本数を増やすなどして回転を強く拘束する「剛接合に近いディテール」を採用することは、小梁中央のたわみや曲げモーメントが計算値よりも小さくなるため、構造力学上、常に安全側の配慮となる。

解答3 :× 解説: 一見、小梁にとっては中央応力が減って安全に見えますが、全体としては危険な状態になり得ます。 まず、端部には計算で見込んでいない「負の曲げモーメント」が発生し、上端筋や溶接部に想定外の力がかかります。さらに、そのモーメントは支持する大梁に「ねじれ」として伝達されるため、支持部材を痛める原因になります。「力が消える」ことはないので、どこかの応力が減れば、別の場所(端部や相手材)の負担が増えていることを忘れてはいけません。

②力の流れの作り方

構造設計が楽しくなる「力の流れ」の読み方/つまずくポイント解説

問題1 地震力を負担させるために耐震壁を配置する場合、平面的にバランスよく配置されていれば十分であり、その手前に大きな吹き抜けや階段室があって床スラブが繋がっていなくても、剛床仮定によって力は自動的に耐震壁へ伝達されると考えてよい。

解答1 :× 解説: 力(地震力)は床スラブを通って耐震壁に流れます。どんなに立派な壁があっても、その手前に吹き抜けなどでスラブが分断されている(繋がっていない)箇所があれば、力は壁までたどり着けません。平面図だけでなく、力が流れる「道」が繋がっているかを必ず確認する必要があります。

問題2 二次部材の検討において、部材Aと部材Bが互いに交差している場合、お互いがお互いを支え合うようなモデル化(Aの支点をBとし、Bの支点をAとする)を行うことは、荷重を分散させ部材断面を小さくできるため、経済的かつ合理的な設計手法といえる。

解答2 :× 解説: これは「不安定構造物」の典型例です。 力の流れは基本的に「支点反力→次の部材の荷重」という一方通行である必要があります。お互いがお互が支え合う状態(相互依存)は、実際にはどちらも支えがなく、荷重を負担できない不安定な状態を意味します。このようなモデル化は避けなければなりません。

問題3 構造設計のスキルアップにおいて重要なのは、計算ソフトが出した結果を正解として受け入れることではなく、計算前に「ここをピンにしたら力はどう流れるか?」と予測を立て、その予測と計算結果のズレを確認しながら、力の流れをコントロールする感覚を養うことである。

解答3 :〇 解説: 構造計算ソフトはあくまで道具です。入力ミスやモデル化の限界も踏まえ、「こうすれば力はこう流れるはずだ」という仮説を持って計算結果と対話することが、設計者のスキルを高め、意図した構造物を実現するための近道です。

絶対変位と相対変位を使い分けることの重要性

問題1 解析ソフトで小梁のたわみを確認した際、中央の「絶対変位」が許容値(例:スパンの1/250)を超えていた場合は、小梁単体の剛性が不足していると判断し、直ちに小梁のサイズアップを行うべきである。

解答1 :× 解説:「絶対変位」には、その小梁を支えている「大梁のたわみ」も含まれています。 絶対変位が許容値を超えていたとしても、その原因は大梁が大きく下がっていることであり、小梁単体の変形(相対変位)自体は許容値内に収まっている可能性があります。 その場合、対策すべきは小梁ではなく大梁側になるため、安易に小梁をサイズアップするのではなく、必ず「相対変位」を確認して原因を特定する必要があります。

問題2 建物の偏心率や剛性率などの数値バランスが悪くても、建物全体の剛性が極めて高く、地震時の「絶対変位」が非常に小さい場合であれば、実質的なねじれによる損傷リスクは低いと判断できる場合がある。

解答2 :〇 解説: 偏心率はあくまで剛性の「バランス」を示す指標です。バランスが悪くても、そもそも建物自体が硬くてほとんど変形しない(絶対変位が小さい)のであれば、ねじれによる変形量も微小であり、構造的な被害には繋がりません。数値を合わせるためだけに無理に耐震壁を薄くするなどの調整は、本質的な安全性を損なう恐れがあります。

問題3 剛性の高いRC耐震壁と、剛性の低い鉄骨フレームが混在する建物において、両者の剛性差(相対変位)による悪影響を防ぐためには、必ずエキスパンションジョイント(EXP.J)を設けて構造的に分離しなければならない。

解答3 :× 解説: EXP.Jで分離するのは一つの有効な手段ですが、「必ず」ではありません。もう一つのアプローチとして、剛性の低い鉄骨側とRC壁が一体になって動くようにスラブ剛性を調整することで、相対変位を生じさせない(力をスムーズに流す)という方法もあります。状況に応じて適切な設計判断が必要です。

細い柱(地震力を負担しない部材)の作り方

問題1 柱の断面サイズを小さくするために「地震力を負担させない」設計とする場合、その柱の柱頭および柱脚の接合条件は、回転を強力に拘束する「剛接合(固定)」とするのが最も効果的である。

問題1 :× 解説: 地震力を負担させない(=水平剛性をゼロに近づける)ためには、変形を拘束しないことが重要です。柱頭や柱脚を「剛接合」にすると、強制的に変形を拘束して曲げモーメントが発生してしまうため、断面を小さくできません。逆に「ピン接合」にすることで、曲げモーメントを発生させず、軸力のみを負担する細い柱が可能になります。

問題2 建物内に極めて水平剛性の高い耐震壁やブレースを配置することは、地震時の建物全体の変形を抑制するだけでなく、剛性の低い(細い)柱に分配される水平力を相対的に小さくする効果がある。

問題2 :〇 解説: 地震力は、剛性の高い(硬い)部材に集中して流れる性質があります(フックの法則 F=kxのイメージ)。極めて硬い耐震壁を設けることで、相対的に柔らかい細い柱に流れる地震力を減らすことができます。これを意図的に行うのが「剛性分離」の考え方です。

問題3 一貫構造計算ソフトにおいて「剛床仮定」を用いて解析を行っている場合、地震力が床スラブを介して耐震壁などの鉛直部材へ適切に伝達されるかどうかはソフト内で自動的に検証されているため、スラブに開口がある場合や細長い平面形状であっても、設計者が個別に床の水平力伝達を検討する必要はない。

問題3 :× 解説:「剛床仮定」はあくまで「床が無限に硬く、一体で動く」という計算上の仮定に過ぎません。実際のスラブがその力を伝達できる耐力を持っているかは、ソフトの自動計算では検討されないことが一般的です。特に、耐震壁から離れた位置にある柱や、開口でスラブが細くなっている部分は、設計者が手計算などで力の伝達経路を確認する必要があります。

混構造を「単純化」する思考法・役割分担と力の伝達

問題1 RC造と鉄骨造などを組み合わせる「混構造」の設計において最も重要なアプローチは、複雑な挙動をすべて同時に解く高度な解析テクニックを駆使することであり、部材ごとに役割を分担させるような単純化は、計算精度を落とすため避けるべきである。

問題1 :× 解説: 熟練の設計者ほど、混構造を「単純な構造の組み合わせ」として捉えます。 地震力に抵抗する部材、長期荷重を支える部材といったように、各材料の特性に合わせて明確に「役割分担」させることで、複雑な問題をシンプルに整理し、合理的で無駄のない設計が可能になります。

問題2 構造力学の大原則として「力は剛性の高い(硬い・変形しにくい)部分に集中して流れる」という性質があるため、混構造の設計では、剛性の高い耐震壁などに地震力を集め、剛性の低い鉄骨フレームには主に長期荷重を負担させるなど、剛性差を利用して力の流れをコントロールすることが可能である。

問題2 :〇 解説: 「力は硬いところへ流れる」は構造設計の鉄則です。 例えば、極めて硬いRC耐震壁を配置すれば、地震力の大部分はそこに流れます。これを利用して、他の鉄骨柱などは地震力をあまり負担させず、長期荷重を支える役割に専念させるといったコントロールが可能になります。

問題3 混構造において異種材料(鉄骨とRCなど)が接合する部分は、それぞれの応力(引張力や圧縮力など)を相手側の材料が負担できる形(アンカーボルトの引抜力や支圧応力など)に適切に変換・伝達できるディテールとする必要があり、ここが先行して破壊しないように設計することが極めて重要である。

問題3 :〇 解説: 接合部は混構造の生命線です。 例えば、鉄骨梁のフランジが持つ引張力を、RC柱にどう伝えるか(アンカーボルトや定着板など)が重要です。部材が粘り強さを発揮する前に、この「力の受け渡し場所」である接合部が壊れてしまうと、建物全体が崩壊する危険なメカニズムになってしまいます。

  • URLをコピーしました!
目次