設計段階でしっかり調整したと思っていても、現場段階で調整事項は多々発生します。
構造図の内容は基本的に確認申請図として審査を受けた図面になるため、好き勝手に変更事項を反映できるわけではありません。
今回の記事では、現場での変更事項の法的な扱いと、手続きをする上での心得を解説していきます。
①現場での変更事項の法的扱い
計画通知・確認申請での副本から内容を変更する場合には、変更の手続きが必要になります。その変更の内容によって計画変更と軽微変更の手続きに分類されます。
この二つの違いは以下のようになります。
・計画変更
計画変更に該当する場合には、設計段階の申請とほぼ同様の手続きになります。手数料の考え方は、該当内容によりますが基本的には該当面積によって決まるので、ほとんどの場合に設計段階に比べて安くなります。設計段階と同様の手続きになるので、当然消防同意も必要になるためそれだけの期間を見込んでおく必要があります。
そして、最も大きな違いは、変更該当箇所の施工ができない点です。これは設計段階の申請において、確認済証の交付前に着工できないのと同じ理屈です。
そのため、計画変更に該当する内容については、工程を把握したうえで余裕を持って手続きをする必要があります。
・軽微変更
一定の条件を満たす変更は軽微変更として扱うことができます。計画変更と違い、手続きが施工後でも可能な点が大きく異なります。こちらは手数料もかからず、消防同意も不要です。
手続きが施工のクリティカルにはなりませんが、手続きのタイミングとしては特定工程検査や完了検査の際に合わせて手続きします。ただし、検査時に同時に提出した際に指摘対応を行うと、検査済証が発行される時期が遅れたり、万が一、指摘対応の中で変更が生じた場合に作り直さないといけなくなります。
工期への影響はないとは言えあらかじめ協議はしておくことが重要になります。正式な手続きではない段階の記録はきちんと文章や資料で残して認識に齟齬が生じないようにしましょう。
②軽微変更の条件とは?
通称スカイツリー本と言われる『建築構造審査・検査要領 確認審査等に関する指針 運用解説編』に事例を含めてどのような内容が軽微変更に該当するか記載があるので、手続きをするうえでの必読書になります。
軽微変更は12条5項と呼ばれることもありますが、軽微変更は正式に言うと建築基準法施行規則第3条の2に規定される軽微な変更になります。その中の8号~15号が主に構造の変更内容に該当します。この号数に該当すれば軽微変更として扱えます。
大きな考え方としては、部材耐力の低下がないことと、一貫計算を流し直すことなく安全性が確認できることが軽微変更に該当します。
ここで重要なことは、変更内容をどのように解釈し、説明すれば、法文の意図に合致すると判断してもらえるかを考えることです。
例えば、断面サイズを小さくしたままだと耐力の低下になってしまいますが、配筋を追加することで耐力を維持するなど、適合するように思考することが不可欠です。
極端なことを言えば、どのような変更内容も解釈の仕方次第では計画変更としても読むことはできるし、軽微変更と読むこともできてしまいます。
③変更内容の協議の心得
大きな心得は申請業務時の進め方の心得と重なります。以下の参考記事の概要を示します。
参考:申請業務の進め方と心得
協議では、機関や自治体の担当者からの指摘を絶対視しがちですが、それは危険です。指摘は必ずしも正しいとは限らず、建築の解釈は状況により多様だからです。
指摘を鵜呑みにせず、まず根拠となる法令の条文を確認しましょう。曖昧な経験論での議論は避け、書面やメールでやり取りして互いの認識を正確に揃えることが肝心です。相手が専門家だからと臆せず、法に基づいた議論を心がけてください。
協議は「お伺いを立てる」場ではなく、こちらのロジックと根拠資料で「確認を取りに行く」場です。あらゆる指摘を想定して準備し、「はい」と言わせることを目指しましょう。一度不利な結論が出ると覆すのは困難なため、特に初回の協議が重要になります。
現場段階の協議で一度「計画変更に該当する」という印象を持たれると、その判断を「軽微な変更」に覆すことは非常に難しくなります。そのため、初期の相談の段階から資料の作り込みが重要になります。
軽微変更にするためには、基本的に一貫計算を流し直しはできないため、一貫計算の内容を理解したうえで手計算で説明資料を作る必要があります。そのため普段から、一貫計算に依存していると資料を作れないという壁に当たります。
手計算で説明資料を作れるというのは内容を理解するために重要なことなので、普段から手計算でも内容が確認できることを意識していきましょう。
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