【構造設計監理】現場監理の基本動作~先回り力で品質と信頼を築く

【構造設計】

設計を実現するためには適切な現場運営は不可欠です。会社の方針によって監理業務への関わり方についてはまちまちかもしれませんが、構造設計者が監理業務に関わることは多いと思います。

今回の記事ではどのような場面でも使える基本的な部分に照準をあてて監理業務の基本動作について書いていきます。

スポンサーリンク

①設計監理業務とは

設計監理業務とは、設計者が作成した図面や仕様書通りに工事が進められているかを確認し、品質が確保されるように管理する業務のことです。簡単に言えば、設計者の意図がきちんと現場で実現されているか、工事の品質が保たれているかを見守る役割を担います。

設計を実現するため現場との良好な関係・運営は不可欠です。
設計場面とは違った特有のスピード感や、意図だけでなくモノが作れる具体的なやり取り(指示)が求められます。

現場が進んでいく中で設計図のすべてが完璧ということはほとんどなく、色々な次元でドキドキすることや後ろめたくなることもありますが、そんなときにも反省や犯人探しをするのではなく、常にどうすれば物事が前進するのかを考える意識がとても重要になります。

一方で実際にモノができていく充実感を味わうことができます。
監理者は実際に自分でモノを作ることはできないので、事前にしっかりと情報の伝達を行うことと、ミスや手戻りが生じないような仕組みを作る必要があります。

後出しはNG!すべて先回りが鉄則と言っても過言ではありません。

②先回りするためにすること

先回りするために具体的にやること、意識することを出していきます。

・正確な図面の固定

構造に限らず、申請図の副本は必須になります。現場ではこの副本の通りに作ることが必須になります。最近ではプロジェクトの進め方が期限の関係などで複雑化して、申請図以外にも発注図や契約図、現場発行図など色々な名前の図面が登場することもあると思いますが、最新かつ確定版の図面を明確に示すことが何よりも現場の安心に繋がります。

設計者が思っている以上に、現場ではこういった経緯を把握するのは困難です。丁寧な説明と確実な資料の提示を心がけましょう。

・書面で情報は固定する

設計段階でも重要なことではありますが、現場では関係者も多く、期間も長くなるので確実に書面で残すようにしましょう。
スピードを重視したくなることもありますが、電話だけで済ますことはやめましょう。書面より先に電話でやり取りしたとしても質疑書などで形にしておきましょう。

・工程・検査日程の把握

先回りするために工程の把握は不可欠です。特に現場の前半は構造質疑が中心になるので、スケジュールの余裕を確保するようにしましょう。
また、中間検査は躯体関連が中心になるので、その時期に合わせて変更項目の手続き(検討書の作成)を確実に行います。検査済証の発行の遅れは工程遅延に直結します。

・質疑はすぐに回答する

色々と忙しいときに質疑を受領することもあると思います。そのような時でも後回しにせずに受領した段階で中身を確認して重要度を把握していつ回答するかだけは決めるようにしましょう。
単純な確認だけしたい場合もよくあり、例えば『よろしいです』だけで回答できるものもあるので、その場合にはすぐに回答できます。

少しでも解釈にすれ違いが出そうであれば電話、メールで確認しましょう。また必ず現場の状況も把握したうえで、ピントのズレた無理をいった回答は避けましょう。
多くの場合、質疑の期限は1週間としていると思いますが、期限に余裕があっても基本的には3日以内を目安に回答するようにしています。回答の早さで信頼関係は確実に変わります。信頼関係ができればお互いに現場運営がしやすくなります。

・変更事項の把握

変更事項については図面赤入れ+リストなどで確実にストックしておきましょう。現場での検査や質疑回答は常に最新の状態で行いましょう。特に現場で古い情報が使われていることがないようにデータ・情報の共有は確実に行う必要があります。

検査時に施工者だけに資料の準備をさせるのではなく、自分で最新情報を持参するようにしましょう。例えばですが、検査の最初に現場運用図の中で、質疑などで最後に変更したところだけでも確認して更新の具合を確認するだけでも情報齟齬をなくすことはできます。

・特定工程検査でのスタンス

監理者のスタンスはあくまでも「検査される側」になります。施工者と同じ立ち位置です。なので、検査員の指摘に乗っかって一緒になって指摘するのはNGです。
しかし、検査の主体は施工者になるので、書類の提示や説明については基本的には施工者に任せますが、当然のことですが事前の確認や内容の把握はしておきます。

③詳細に捕らわれず全体感を忘れない

現場では大小問わず本当に色々な課題が出てきます。その1つ1つの課題に丁寧に答えていくことは重要なことですが、期限に追われて目先的に答えていくことだけに集中するのではなく、常に全体感を忘れずに課題にあたることを忘れてはいけません。

本当に多くの関係者が関わり、大きなお金も動いている中で、正論だけ言っていても前進しないこともあります。そのような状況では部分的な最適解では回答にならないこともあります。

施工者含めて、多くの専門家の力を借りることができるので、詳細な技術について頼れるところは頼って、設計監理者でないと判断できない部分に注力することもときには重要です。

具体的には配筋検査でも、本数を数えることは施工者や鉄筋業者が確認する仕組みを作ることで任せて、自らは、全体の配筋の傾向や特殊な部分の確認など、施工者では気づけないところを見るといった役割を理解した立ち振る舞いをしていきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました