【わかりやすい構造設計】構造図・計算書・コストでの比を使ったチェック

【構造設計】

構造設計に限りませんが建築設計の中では数字を扱う場面が多くなります。その場でどんな数値も細かく算出していては膨大に時間が掛かってしまって設計が進まなくなってしまいます。

チェックのスピードを上げたり、大きな間違いをなくすために比を使うことがとても有効です。

今回は実務の中でよく使用している比を用いてのチェック内容について書いていきます。

チェックをするときの手順で書いていきますが、設計をしている時も同様の視点で考えることで大きな抜けや間違えを防げると思います。

①構造図

構造図では部材のサイズ感、スパンのオーダーを見て、これまでの経験もしくは類似案件と比べて大きな部材のサイズ感、配筋量などで大きな乖離がないかを把握します。

具体的な数値では表しにくいですが、図面全体をパッと見たときのバランスも重要だったりします。極端に違う部材が入っているとなにか無理をしている(間違えている)か、その物件での注目ポイントだったりします。

ほぼ対称形なのに部材符号が同じでないなどは何か間違っている可能性もあります。

次にその案件の中での基本となる部材に注目します。部材符号で言うとC1やG1、B1、S1となる部材だと思います。それが一般的な部分に使用される部材だと思うので、それと比較してスパンや荷重の大小、雑壁が付いていたり短スパンで剛性が高そう(地震力が集まる)などの特徴で分類したうえで各部材の断面性能を比較していくと、変な断面や耐力や剛性が不足(変形しそう)な部材が見えてきます。

小梁やスラブについては多くの物件で共通してくるものなので、自分の中での基本となるB1、S1を持っているとよいと思います。

あとは基本的なことではありますが、階ごとの配筋量も基本的には下階の方が多くなることや、梁の中央と端部の配筋量の差についても変な割合になっていないかを確認しましょう。

鉄骨においては主部材の断面に限らず、アンカーボルトやガセットプレートなど色々な部材が一緒に出てくるので、主要部材に取りつくそれらの部材の板厚(厚さが極端に異なるなど)や材料強度のバランスが取れているのかを意識しましょう。

②計算書

まず重要かつ比でチェックするのが有効なのが荷重です。荷重表で細かく積み上げることも重要ですが、各材料の比重は確実に知っておく必要があり、それを踏まえるだけで大きな間違いはなくなります。細かく荷重を積み上げなくても、コンクリート系の仕上げのある、シンダーコンや屋上の押えコンなどがある部分は他の部屋に比べて明らかに重くなることは把握できます。

一貫計算の中でも、まずは層ごとの平米荷重をチェックすることで大きな抜けや入力間違えなどは防ぐことができます。

応力図については構造図でのチェックの視点とほぼ同様になりますが、基準を定めてそれと比較して大きいのか小さいのかを確認することから始まります。そこでおかしな部分があれば詳細の数値(荷重⇒剛性⇒剛床などの解析条件)を確認していくのがよいと思います。

X方向とY方向での違いや、耐震壁とラーメンでの地震荷重の負担比率から断面のバランスとが整合していることも大きな確認ポイントになります。

③コスト

コストは積み上げから入ると失敗する可能性が高いと思います。ベースとなる数量から極端に変わる際には必ず目立った理由があるはずです。そうではない場合には、基本的には過去の歩掛りから大きく乖離はしません。

なのでまずは、必ず基本となる歩掛を設定するようにしましょう。自身の蓄積や一般的に開示されている情報を有効に利用しましょう。

少し詳細な部分で言うと杭工事が占める比率は大きな計画を考える際には重要になります。

杭の本数を減らすとコストが減ると考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。支持する荷重全体が変わっていないのであればどこかで負担する必要があります。

杭を減らした箇所周辺の杭径が多少大きくなる程度であれば、多分コストは下がっていると思います。ただし、杭減らしたということは上屋でスパンを飛ばすことになっていたり、耐震要素が減ることになっているので、そこで無理をしてコストが増えていないかの確認も必要になります。

その大きな判断をするためにも、上部躯体と杭工事比率をおさえて、全体的に杭を減らすのかが効果的なのか、スパンで無理をせず上屋のコストを抑えた方が効果的なのかを固定しましょう。

あとは基本中の基本ですが、コンクリートの面積辺りのm3、コンクリートのm3辺りの型枠m2、鉄筋kgは把握しておきましょう。経験的には型枠、鉄筋については、面積辺りよりもコンクリート量をベースにした方がブレが少ないと思っています。

その場合にRC部材の柱や梁、スラブ、壁といったフレーム型と面部材でどのような傾向があるのかは知っておいた方がよいです。コスト状況に応じて、コンクリート、型枠、鉄筋のどれを減らすのが効果的なのかの判断力に繋がります。

鉄骨ついては、基本的な面積辺りのt数が判断のベースになります。

最近では一貫計算で簡単に数量が拾えるようになっているので、その数量と実際の積算数量との差を比率で把握しておくと、雑多な数量を拾わなくても概算が簡単にできるようになります。

単価に関する比としては、各種工事で主要な材工以外にも積算に入ってくる価格がどの程度で含まれているのか把握するために、各種の工事費を主要数量で割ったもので、雑工事比率を把握しておくと概算が楽になります。

色々な場面で比を使うことで便利かつ間違いのない成果にも繋がるので、普段から比に置き換える思考はとても重要です。

今後の記事では具体的な値も紹介していきたいと思います。

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