【構造設計コラム】設計精度を高めるのに不可欠な「言語化」の思考法

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構造設計者は自然・工学・形を繋ぐ通訳者
こちらの記事では、構造設計者にとって言語力が重要である理由と、どのような言葉を使うべきかについて解説しました。

建築設計に携わる方の多くは理系出身でしょう。「言語力・文章力」と聞くと、学生時代の国語や小論文のようなものをイメージし、「自分は国語が得意ではなかった、むしろ苦手だった」と身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。

実際に私も国語は苦手でしたが、実務を通じて試行錯誤を重ねる中で、今では周囲からの反応を見ても、人並み以上の力を付けてこれたと自負しています。

今回の記事では、私自身の体験を踏まえ、構造設計実務で真に必要とされる「言語力・文章力」を身に付けるための思考法について深掘りしていきます。

目次

① 方法論よりも、まずは「伝えたいこと」を明確にする

文章を作成する上でもっとも起点となる思考は、「文章は誰かに何かを伝えたいから作るもの」という本質に立ち返ることです。だからこそ、読み手に対する「心遣い」が不可欠になります。

文章を書くためのテクニックや語彙力は、後から付いてくるものです。先に手法の習得ばかりを追い求めてしまうと、本当に必要な「伝える内容」がないまま、形だけの方法論に頼ることになってしまいます。

「伝えたい中身」が明確になっていなければ、どんなに優れた文章テクニックを持っていても、それを活かすことはできません。まずは「何を届けたいのか」を自分の中で定義することから始めましょう。

② 「対象」と「目的」を明確にする

では、どのようにして伝えたいことを明確にするのか。ここが学校のテストとは異なる、仕事における実践的な思考のポイントです。ここを意識できれば、文章に対する苦手意識は自ずと解消されます。

前提条件の把握

同じ質問を投げたとしても、その答えは前提条件によって「正解」にも「不正解」にもなり得ます。まずは相手が同じ視点で議論できるよう、前提条件を揃えるための情報を提示しなければなりません。そのためには、「相手が現状をどこまで把握しているか」を知る必要があります。

特に目上の相手や忙しいクライアントの場合、過去に一度状況を伝えていたとしても、時間が経てば記憶が薄れていることもあります。改めて現在の状況を整理して伝える心遣いが、その後のやり取りをスムーズにします。

また、相手の専門性に合わせて、言葉のレベルを選ぶことも重要です。専門用語をそのまま使うのか、適切な補足や例えを交えて伝えるのか。自分の世界を中心に考えるのではなく、相手の世界に自分を合わせることを常に意識しましょう。

「言いたいこと」ではなく「聞きたいこと」を伝える

説明文を作る際、こちらが言いたいことだけで構成してしまうのもよくある失敗です。情報は多ければ良いというものではありません。むしろ余計な情報が混ざることで、もっとも重要な情報が伝わりにくくなることさえあります。

対象を明確にすれば、相手が何を求めているのか、自ずと照準が絞られてきます。

実務に引き付けて言えば、多くの関係者と調整する場面で、全ての課題を常に全員に共有するのは非効率です。調整内容に応じて必要な情報を精査し、関係者を絞る。これも『相手が聞きたいことを伝える』ための実践のひとつです。

これは採用面接やプレゼンの場でも同様です。アピールしたいことが沢山あっても、こちらの『言いたい順』ではなく、相手が『知りたい順』に構成を変えるだけで、伝わり方は劇的に変わります。

相手とのやりりは2、3手先を想定する

言葉を届けた際、それを受けて相手がどのような反応を返すかを予測することで、こちらの言葉の精度を高めることができます。

例えば、相手が「それってどういうこと?」と聞き返してくることが予測できるなら、その疑問を先回りして解消する表現に修正できます。

さらに発展させれば、『こちらが期待する答えを相手から引き出すために、十分な情報と表現が備わっているか?』を考えることにも繋がります。

会話でも文章でも、1ターンですべてを完結させようとすると、情報過多になったり無理が生じたりします。無理に1回で伝えきるのではなく、数手先まで見据えた「伝わることを優先した表現」を選択しましょう。

参考:評価される「質問力」の鍛え方|成長と信頼を勝ち取る3つのステップ

③ 構造設計の精度も高まっていく

これまで解説してきた「相手への心遣い」「目的の明確化」「先を見通した構成力」を実践することは、実は構造設計自体の精度を高めることに直結します。

構造計画の考え方を文章で論理的に整理し、正確にアウトプットできるということは、自身の理解度が高いだけでなく、その設計自体が「綺麗な構造計画」になっていると言えます。

行き当たりばったりで計算数値を合わせるだけの設計では、考え方が明確とは言えません。 「実現したいこと」を明確にした上で、それを裏付けるために検証を行うのが本来の構造計算です。

  • 計算の手順や注視すべきポイント
  • 入力条件を変化させた際の挙動の予測
  • 想定と結果が異なった場合の要因分析

こうした思考プロセスを、曖昧にせず言葉として残せる能力(言語力)は、構造設計をする上でとても重要な能力になります。

参考:評価される「質問力」の鍛え方|成長と信頼を勝ち取る3つのステップ

今回お伝えした内容は思考のベースとなる部分ですので、一度理解したからといってすぐに完璧にこなせるわけではないかもしれません。しかし、日々の実務で意識し、実践を繰り返せば必ず習得できるものです。

「ちょっと立ち止まって、相手の視点で見直してみる」。その小さな意識の変化が、あなたの設計者としての成果を大きく引き上げていくはずです。

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