【わかりやすい構造設計】一貫計算チェックで絶対に見るべき3つの視点

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これまで一貫計算の各項目について解説してきましたが、今回はそれらの詳細を確認する上で非常に重要となる「全体的なチェックの視点」を解説します。

「他人が作った計算書は、どこから見ればいいか分からない…」 「膨大な出力結果を前に、つい断面算定結果だけを見てしまう…」

そんな経験はありませんか?この記事を読めば、若手技術者が陥りがちなチェックの落とし穴を避け、効率的かつ正確に計算書を読み解くための3つのステップがわかります。

目次

①計算書を見る側の気持ちを知ろう

一貫計算に限った話ではありませんが、思っている以上に他人が作成した計算書を読み解くのは難しいものです。

これは百聞は一見に如かずで、一度社内の誰かの計算書をチェックしてみればすぐに実感できるはずです。「どこに何が書いてあるのか?」「この数値はどこからきているのか?」「なぜこの考え方を採用しているのか?」など、次々と疑問が湧いてくるでしょう。

いきなり全てをチェックするのは難しいので、まずは内容が理解しやすい荷重表や二次部材の検討だけでも確認してみてください。それだけでも、自身の思考や意識の持ち方が変わってきます。明確な目的なく「わかりやすさ」を追求しても、独りよがりなものになってしまいます。

作成者本人が「これくらいわかるだろう」と思っていることは、第三者には伝わらないことが多いです。それくらいの意識でいることが、ちょうど良いのです。

これは、何でもかんでも書けば良いということとは違います。「どこかに書いておけばいいだろう」という保守的な意識は、情報量を増やすだけで、かえって計算書を複雑化させます。

わかりやすく作るということは、時間をかけることとイコールではありません。むしろ、わかりやすさを意識することで、結果として自分自身のミスにも気付きやすくなり、複雑な整理が不要になるため時短に繋がるのです。

参考:設計図書の不整合はなぜ起こる?不整合はどうしたらなくなる?
参考:構造設計者は自然・工学・形を繋ぐ通訳者

②まず「計算設定」の意図を確認する

一貫計算は非常に便利な検討ツールですが、こちらの指示が間違っていてはその実力を発揮できません。

スパンや部材断面、荷重条件といった入力情報の正しさも重要ですが、それ以上にまず確認すべきなのが、計算の前提となる「各種設定」です。

この設定が意図したものになっていなければ、どんなに詳細な計算内容をチェックしても時間の無駄になってしまいます。現在の一貫計算は設定項目が非常に多く、それらを理解せずに計算内容を確認することはできません。

特に、全ての設定をしなくても初期設定(デフォルト)である程度の答えが出てしまったり、他の案件のデータを流用した場合にもそれなりの答えが出てしまったりするのが、落とし穴です。

設定内容の意図を一つひとつ理解していくことが、一貫計算を理解する上での近道になります。解説書を全て読んで完璧に理解するのは不可能に近いですが、「この設定は何を意味するのか?」という問いを立てることで、目的意識を持って設定項目を学べるため、思考がしやすくなります。

そうすることで、自分がやりたい計算を自ら組み立てる能力も養われていきます。

まずは、「意図しないデフォルト設定が採用されていないか」「前の案件の設定が残っていないか」「今回の案件特有の設定が反映されているか」を確認した上で、本格的なチェックを始めましょう。

参考:設計根拠のおさえ方/学びなおしのススメ

③「計算書の順番通り」に確認する

計算書の内容を確認する際、ワーニングメッセージや断面算定結果、保有水平耐力の結果にすぐに飛びついてしまうのは、よくある失敗例です。

目先の数値に飛びつきたくなる気持ちもわかりますが、まずは「その結果の信憑性」を先に確認する必要があります。

前述した計算設定が反映されているかを代表的な数値で確認したり、個別で補正した剛性、非剛床範囲、支点条件などを確認したりすることが先決です。

構造計算書は、結果ページよりも前のページには、必ずそれを導くために使用した条件や数値が記載されています。この流れに沿って計算書を一度でも通して見てみることが、理解のためには不可欠です。

当然、経験を積めば、全てを頭から見なくても、どこに何が書いてあるのか、結果の数値に違和感はないか、その違和感の原因はどこにあるのか、といったことがわかるようになります。

少なくとも、社内での品質管理や指摘対応の打ち合わせの際に、指摘された箇所を確認しようとして対象ページよりも後ろのページから開き始めたら、「この人は電算任せになっているな」と見抜かれてしまいます。

膨大な情報をがむしゃらに理解しようとするのではなく、基本的な構成や確認の作法を意識して実践することが、理解を深めるスピードを上げること繋がります。

参考:構造解析のモデル化の基本【総まとめ編】~6つのテーマで学ぶ本質と実践法

まとめ:一貫計算チェックの質を高める3つのステップ

今回は、一貫計算のチェックにおける重要な視点を解説しました。最後にポイントを振り返ります。

  1. 前提を疑う: 他人の計算書は伝わらないのが当たり前。だからこそ「なぜこの設定なのか?」という根拠を確認する姿勢が重要。
  2. 設定から見る: 結果の数値に飛びつく前に、計算の前提となる「各種設定」が意図通りか(流用データが残っていないか)を必ず確認する。
  3. 流れで見る: 計算書は「前提条件→計算過程→結果」という物語。頭から順番に読み解くことで、結果の妥当性を正しく判断できる。

この3つのステップを意識するだけで、チェックの精度とスピードは格段に向上します。ぜひ次のレビュー業務から実践してみてください。

【理解度チェック】知識を定着させる〇×クイズ

この記事の重要ポイント、しっかり理解できましたか?3つの〇×クイズで腕試ししてみましょう!

問題1 一貫構造計算ソフトを用いた設計のチェックにおいて、最も効率的かつ実務的な方法は、まず最終的な「断面算定結果(検定比)」や「ワーニングメッセージ」を確認し、そこでNGやエラーが出ている箇所のみを重点的に遡って原因を探求することである。

問題1 :× 解説: 結果だけを見ても、その数値が「正しい設定」から導かれたものか、「間違った設定」から偶然OKになったものかは判断できません。まず計算の前提となる「計算条件(設定)」や「モデル化」が意図通りかを確認し、その結果の信憑性を担保してから数値を見るのが正しい順序です。

問題2 一貫計算ソフトは入力された部材寸法や荷重情報に基づいて自動的に計算を行うため、スパンや部材断面などの「形状情報」さえ正確に入力されていれば、計算の前提となる「基本設定(計算条件)」がデフォルトのままであったり、流用元の物件の設定が残っていたりしても、構造力学的に大きな間違いが生じることはない。

問題2 :× 解説: 一貫計算ソフトには無数の「計算条件(剛性計算の方法、剛域の取り方、危険断面位置など)」があり、これらが異なれば、同じ形状を入力しても全く異なる応力結果が出力されます。デフォルトや流用設定が今回の建物に適している保証はないため、必ず設定内容を一つひとつ確認する必要があります。

問題3 構造計算書のチェックにおいて、結果の数値に違和感を持った際、その該当ページよりも「後ろのページ(詳細結果など)」を探すのではなく、「前のページ(入力条件や応力解析条件)」に戻って確認しようとする姿勢は、計算プロセスを理解し、ソフト任せにしていないことの表れといえる。

問題3 :〇 解説: 構造計算書は「条件設定 → 応力解析 → 断面算定」という順序で構成されています。結果(出力)がおかしい場合、その原因は必ずそれより前(入力・条件)にあります。結果から前へ遡れるかどうかが、「電算に使われているか、使いこなしているか」の分かれ目となります。

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