【わかりやすい構造設計】既存不適格建築物への遡及適用を利用するための準備と確認ポイント

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こちらの記事で基本知識について解説してきました。今回の記事では実際に既存建物を利用するために実務上での具体的な作業の助けになるポイントを解説していきます。

目次

①既存情報がなによりも重要

既存建物を利用するためには当たり前ですが、既存情報が存在していることが何よりも重要になってきます。既存情報は大きく分類すると、図面、計算書、済証になると思います。

図面と現況の食い違いに注意

図面・計算書があれば現状の大部分は把握することができます。ただし、年代にもよりますが、図面と計算書間、あるいは実際の建物とで内容が食い違っていることは「実務あるある」とも言えます。

特にRC造では壁については重要なチェックポイントになります。計算書では耐震壁になっているのに意匠図や現地では建具が付いているなんてことはよくあります。

なので、食い違っているところがある前提くらいの心持ちで現況と計算書の条件が一致しているかを確認することは必須です。

完了検査済証の重要性

次に済証についてですが、確認済証よりも完了検査済証があることが重要になります。これがあることで図面通りできていることの証明になります。前述したような不整合があることはありますが、完了検査済証があることで目視では確認のできない使用している材料が正しいかや鉄筋が正しく配筋されていることの証明にはなります。

ただし、配筋は検査済証があってもピッチが広くなっていたり、かぶり厚が極端に大きかったり小さかったりするので主要な部分ははつりや鉄筋探査で傾向を知ることは重要になります。

法的な観点で言うと、建築物は確認済証取得時ではなく着工時の法令に適合している必要があるため、完了検査済証があることで既存不適格であっても違法建築物ではないことの証明になります。

参考:どの時点の法に適合させるのか

現行法規に適合もしくは既存不適格であることが確認できることが、既存建物への増築等が行えるようになります。

着工時の法適合を証明するには図面をもとに現況調査を行い、図面通りに施工されていることを証明して補完する方法もありますが、作業量が大きく増えることは避けられません。

もしお施主さんの方で済証を保存していなかった場合でも、民間審査が始まる以前の建物であれば役所の方で検査済証を発行した記録を残している可能性もあるので対象の自治体に問い合わせてみるのも手段の1つとしてあります。

②既存不適格項目のチェック

申請する際には既存不適格調書を提出することになります。既存不適格調書には前述したような既存情報(図面や計算書、済証)の有無やどの段階で既存不適格化になったかを記載します。

既存情報が十分でない場合や増築の規模に応じても提出資料の量が変わってきます。図面や済証がない場合には現地調査の結果報告や図面の復元なども必要になってきます。

参考:既存建築物の現況調査ガイドライン(第3版)(国土交通省)

どの段階で既存不適格になったのか(基準時)を確認するには法改定の内容をチェックする必要があります。この改定内容をまとめられている資料がないと自分で改定の履歴を追っていくことになり非常に手間が掛かります。

ネットや書籍で有効な資料が見つけられていないのですが、以前に審査機関の方に法改定の履歴を確認する資料がなくて基準時の確認が大変ということを相談したら、履歴がリストになった資料をいただいたことがあります。なので審査機関の方に効率化する方法を相談することがおススメです。

新耐震での既存不適格であれば基準時さえ明確になれば特に追加で大きな作業は必要になりません。旧耐震での既存不適格の場合には新耐震に適合させることも法的にはあり得ますが現実的ではないので耐震診断がほぼ必須と言えます。

業務のボリュームを把握する上でも既存情報の有無と耐震診断がすでに行われているのかも重要な確認項目になってきます。ここでの耐震診断は特に評定を取得している必要はありません。

③まとめ

今回の記事では、既存建築物を活用(増築・改修)する前段階として、設計者が行うべき具体的な準備と調査のポイントについて解説しました。 机上の計算を始める前に、以下の3つの実務的なハードルをクリアする必要があります。

  • 「完了検査済証」は適法のパスポート: 既存建物を扱う上で、図面や計算書以上に重要なのが「完了検査済証」です。これがあることで、着工時の法令に適合して建てられた(違法建築物ではない)ことの公的な証明となります。紛失している場合は、自治体への記録照会や、多大な労力を伴う現況調査・図面復元が必要になります。
  • 図面と現況の「ズレ」を疑う: 計算書では耐震壁として扱われているのに、現地では建具(開口部)になっているといった不整合は日常茶飯事です。また、配筋ピッチやかぶり厚など、目視できない部分の施工精度にもばらつきがあるため、計算書を鵜呑みにせず、現況との照合(必要に応じたはつり調査や鉄筋探査)を前提とした計画が求められます。
  • 「基準時」の特定と審査機関との連携: 既存不適格調書を作成するには、「いつの法改正で不適格になったか(基準時)」を特定する必要があります。膨大な法改定の履歴を自力で追うのは非効率であるため、事前に審査機関へ相談し、改定履歴のリストなどの情報を提供してもらうことが、実務をスムーズに進めるコツです。また、旧耐震建築物の場合は、現実的な対応として耐震診断がほぼ必須となることも念頭に置いておきましょう。
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